PayPalの株価、ChatGPT提携で上昇 — この勢いは続くのか？

PayPal株は再び世間の注目を集めています――今回は人工知能の波に乗っているからです。2025年10月下旬、PayPal Holdings Inc.（NASDAQ: PYPL）の株価は、同社がOpenAIのChatGPTとのハイプロファイルな提携を発表した後に急騰しました。この提携により、ユーザーはChatGPTのインターフェース内でPayPalアカウントを使って直接購入手続きを完了できるようになり、AI駆動型コマースの新時代が到来しました。

タイミングも絶妙でした。AI関連のニュースと合わせて、PayPalは市場予想を上回るQ3決算を発表し、長期低迷していた同社が転換点を迎えたという期待が強まりました。同社株の2桁台の急騰は、辛抱強く保有し続けてきた株主にとって久々の好材料となりました――しかし、ここで大きな疑問が浮かびます：この勢いは続くのか？PayPalのAI統合は本当に成長の原動力となるのか？それとも、市場の熱狂による一時的な跳ね上がりに過ぎないのでしょうか？

今回の提携：PayPalとChatGPTが出会う

PayPalのOpenAIとの提携は、AI駆動型コマースに向けた大きな戦略転換を示しています。この協業により、ChatGPTのユーザーはチャットボットのインターフェース内でPayPalアカウントを使って買い物や決済を完了することが可能になりました。OpenAIの新しいAgentic Commerce Protocol（ACP）により、PayPalはAI駆動会話の中でシームレスなチェックアウト、注文追跡、購入者保護を直接提供できるようになります。これはCEOのAlex Chrissが「摩擦のない、インテリジェントな決済」と呼ぶ未来への大きな一歩で、ユーザーは商品発見から購入まで、ほんの数回のタップで移行できます。

利便性の向上だけでなく、この提携はPayPalの何百万もの加盟店パートナーにとってもChatGPTの膨大なグローバルユーザーへのアクセスの扉を開きます。会話型AIが顧客ジャーニーにより深く組み込まれていく中、PayPalはChatGPTだけでなく、Google BardやPerplexityといった他のAIプラットフォームでもデフォルトの決済レイヤーになることを目指しています。これは新たな「エージェンティック・コマース」の勃興に賭ける大胆な一手であり、今後数年でユーザーがデジタルウォレットとどのように関わるかを再定義する可能性もあります。

PayPal株の急騰――しかし、その裏にあるものは？

PayPal Holdings, Inc. (PYPL) 価格

出典: Yahoo Finance

ChatGPTとの統合が大きく報じられた後、PayPal株は2025年10月28日のプレマーケット取引で最大15％急騰しました。株価は年初以来見られなかった81ドルを超える水準まで上昇し、終値では約8％高で取引を終えました。これはここ数ヶ月でPayPalにとって最良の一日となりました。この上昇は、同社のAI事業への期待と、同日に発表された予想を上回る第3四半期決算という強力な材料が組み合わさった結果です。

しかし、市場の反応は決して熱狂一色ではありませんでした。アナリストたちの多くはAI提携を新しいコマース潮流に乗る賢明な施策と見做しましたが、いくつか注意点も指摘されました。まず、PayPalがChatGPT内で唯一の決済プロバイダーとなる可能性は低く、競争は依然激しいままです。また、実際の収益や取引量へのインパクトはまだ未知数です。PayPalの革新への姿勢は市場から評価されていますが、多くの投資家はこの初期の勢いが持続的な成長へとつながるかどうかを注視しています。

ファンダメンタルズ：決算、エンゲージメント、実行力

AIに関する見出しの陰で、PayPalの最新四半期報告では中核ビジネスの着実な進展が明らかになっています。2025年第3四半期、同社は前年同期比7％増の84億ドルの収益を計上し、ウォール街の予想も上回りました。調整後利益は1株当たり1.34ドルで、これも市場コンセンサス（約1.20ドル）を上回っています。これらの数字は今年に入って同社が発表した中で最も強い四半期となり、長引く低調な業績に悩む投資家たちに安心感を与えました。

特に目立った指標の一つは、Venmoの復調です。ピア・トゥ・ピア決済プラットフォームであるVenmoは、決済額が前年同期比14％増加し、今年は約17億ドルの収益を生み出す見通しとなっています――これは以前同社があまり強調しなかった意味のある貢献です。さらに「今買って後で払う（BNPL）」の利用拡大や、戦略的に質の高い決済ボリュームに注力したことによる取引マージンの改善も報告されています。新CEO Alex Chrissのもと、PayPalは積極的なユーザー拡大から、事業効率向上へと舵を切っています。同社は今期初の配当を実施し、大規模な自社株買いも承認したことで、株主還元への強いコミットメントを示しています。通年EPS予想も5.35～5.39ドル区間へと引き上げられ、PayPalは今後の成長に向けてより収益性の高い集中した基盤を築きつつあります。

PayPal株価予想：次はどこへ向かう？

最近の80ドル台までの反発を経て、PayPal株は再び注目を集めていますが、その今後の行方は依然不透明です。アナリストの目標株価は68ドルから105ドルまで大きく幅があり、大半は80～90ドル台で推移しています。主な３つの見通しは以下の通りです：

• 強気ケース（$95～$105）： AI統合で実質的な取引ボリューム増加、Venmoが収益ドライバーとして加速、消費支出が回復し、業績予想を上回りつつマージンも拡大。

• ベースケース（$80～$90）： ChatGPT統合が一定の進展を見せ、中核指標は着実に成長。PayPalは2025年ガイダンスを達成、自社株買いと事業集中を維持。

• 弱気ケース（$68～$75）： AIコマースの普及が期待よりも遅く、競争がChatGPT内でのPayPalの役割を制限。再投資によるマージン縮小や、マクロ経済悪化による消費支出とブランド決済ボリュームの減少。

慎重ながらも楽観的なセンチメントが広がる中で、今後数四半期――特にホリデーシーズンの業績やAI展開の進捗――がPayPal株が更に上昇するか、それとも元のパターンに逆戻りするかを決定づけるでしょう。

結論

PayPalとChatGPTの提携は投資家心理を再び呼び起こし、同社をAI駆動型コマースの未来に結びつける魅力的なストーリーを提供しました。強固な第3四半期決算と収益性重視へのシフトと相まって、同社は守りから攻めへの転換点にあり、株主に持続的な成長への希望をもたらしています。

ただし、この道には依然として課題が残っています。PayPalのAI戦略の成否は、消費者の採用状況、加盟店のエンゲージメント、そして競争が厳しい決済分野での実行力にかかっています。マクロ経済の圧力も続いているため、投資家は楽観的でありつつも、この勢いが長期的成果につながるかを注視し続ける必要があります。