Firedancerは稼働中だが、SolanaはEthereumが絶対に譲れない安全ルールを破っている

3年にわたる開発の末、Firedancerは2024年12月にSolanaメインネットで稼働を開始し、すでに一部のバリデーターで100日間のテストを経て50,000ブロックを生成しました。

このマイルストーンは、12月12日にSolanaの公式アカウントによって発表され、単なるパフォーマンスの向上以上の意味を持ちます。これは、ネットワークの最も深刻な停止を引き起こしてきたアーキテクチャ上のボトルネック、つまり単一のバリデータークライアントへのほぼ全面的な依存を解消するための、ネットワーク初の本格的な試みを示しています。

Solanaは長年にわたり、サブセカンドのファイナリティや4桁のトランザクション毎秒（TPS）スループットを宣伝してきましたが、ネットワークのコンセンサスパワーの70%から90%が同じソフトウェアを実行している場合、スピードはほとんど意味を持ちません。

その支配的なクライアントに致命的なバグが発生すれば、理論上どれだけ速く動作していても、チェーン全体が停止する可能性があります。Ethereumはプルーフ・オブ・ステーク移行の初期段階でこの教訓を学び、現在ではクライアントの多様性をインフラの衛生管理として不可欠なものとしています。

Solanaも同様の転換を試みていますが、はるかに集中した状況からのスタートとなります。

Firedancerは既存のRustベースのAgaveクライアントのパッチやフォークではありません。Jump CryptoによってC/C++でゼロから書き直されており、モジュラーで高頻度取引に着想を得たアーキテクチャを採用しています。

この2つのクライアントはコード、言語、メンテナンスチームを共有していません。この独立性により、明確な障害ドメインが生まれます。理論上、Agaveのメモリ管理やトランザクションスケジューラーにバグがあっても、Firedancerを実行しているバリデーターには影響しません。

過去5年間で7回の停止を経験し、そのうち5回がクライアント側のバグによるものだったネットワークにとって、この分離こそが重要なのです。

Solanaが逃れられなかったモノカルチャー問題

Solanaの停止履歴は、単一クライアントリスクのケーススタディのようなものです。2022年6月の停止では、durable-nonceトランザクション機能のバグによりバリデーターが同期を失い、4時間半にわたって停止し、協調的な再起動が必要となりました。

その他のインシデントは、メモリリーク、過剰な重複トランザクション、ブロック生成時のレースコンディションに起因しています。Heliusによる完全な停止履歴の分析では、7回中5回の障害がバリデーターまたはクライアントのバグによるものであり、コンセンサス設計の欠陥ではないとされています。

ネットワークが宣伝するスループットも、単一の実装ミスでブロック生成が停止するのであれば無意味です。

数字がそのリスクを裏付けています。Solana Foundationの2025年6月のネットワークヘルスレポートによると、AgaveおよびそのJito改良版がステークされたSOLの約92%をコントロールしていました。

2025年10月にはその数字は下がりましたが、わずかにとどまりました。Cherry Serversのステーキング概要や複数のバリデーターガイドによると、Jito-Agaveクライアントは依然としてステークの70%以上を保持しており、ハイブリッドのFrankendancerクライアントがネットワークの約21%まで成長しています。

Frankendancerは、FiredancerのネットワーキングレイヤーとAgaveのコンセンサスバックエンドを組み合わせて使用しています。

依然としてマイノリティではあるものの、Cherry Serversのデータによれば、Frankendancerのシェアは6月の約8%から増加しています。これらの増加は部分的な解決策の着実な採用を示していますが、12月にメインネットに登場した完全なFiredancerクライアントは状況を一変させます。

バリデーターは今や完全に独立したスタックを実行でき、過去のクライアントバグがネットワーク全体の障害に発展した共通の依存関係を排除できます。

Ethereumの経験が参考モデルとなります。

Ethereum Foundationのクライアント多様性に関するドキュメントでは、コンセンサスパワーの3分の2以上を単一クライアントが制御すると、誤ったブロックを一方的にファイナライズできると警告しています。さらに、3分の1を超えるクライアントがオフラインまたは予測不能な動作をすると、ファイナリティ自体が不可能になります。

Ethereumコミュニティは、すべてのクライアントを33%未満に保つことを最重要の安全要件とみなしており、最適化ではありません。Solanaは1つのクライアントが90%近くを占めるという、はるかに安全圏外の状況からスタートしています。

Client Language Status Stake Share (Oct 2025) Validators True Independence

Jito	Rust	Mainnet	~72%	~700+	Fork of Agave
Frankendancer	C + Rust	Mainnet	~21%	207	Hybrid Independent
Agave	Rust	Mainnet	~7%	~85	Original
Firedancer	C	Non-voting mainnet	0%	0	Fully Independent

Firedancerが実際に変えるもの

Firedancerは、低レイテンシ取引システムから着想を得たアーキテクチャ（並列処理タイル、カスタムネットワーキングプリミティブ、負荷下での決定論的パフォーマンスに最適化されたメモリ管理）でSolanaのバリデーターパイプラインを再実装しています。

技術カンファレンスでのベンチマークでは、このクライアントが制御環境下で毎秒60万から100万超のトランザクションを処理できることが示されており、Agaveの実証済みスループットを大きく上回っています。

しかし、パフォーマンスの上限よりも重要なのは障害ドメインの分離です。Firedancerのドキュメントやバリデーターセットアップガイドでは、このクライアントが設計上モジュラーであり、ネットワーキング、コンセンサス参加、トランザクション実行を個別のコンポーネントが担当していると説明されています。

AgaveのRustアロケーターにメモリ破損バグがあっても、FiredancerのC++コードベースには波及しません。Agaveのブロックスケジューラーに論理エラーがあっても、Firedancerのタイルベース実行モデルには影響しません。

この2つのクライアントは独立して障害を起こすことができるため、ステークの分布が同時に過半数がオフラインになるのを防げば、どちらか一方に壊滅的なバグが発生してもネットワークは生き残れます。

ハイブリッドのFrankendancer展開は段階的な導入として機能しました。オペレーターはAgaveのネットワーキングおよびブロック生成コンポーネントをFiredancerの同等品に置き換えつつ、Agaveのコンセンサスおよび実行レイヤーは維持しました。

このアプローチにより、バリデーターは未検証のコンセンサスコードにネットワーク全体を賭けることなく、Firedancerのパフォーマンス向上を享受できました。

10月までにFrankendancerが獲得した21%のステークはハイブリッドモデルの有効性を示しましたが、同時にその限界も明らかにしました。すべてのバリデーターが依然としてAgaveのコンセンサスに依存している限り、その共通レイヤーにバグがあればチェーンは停止し得ます。

12月の完全クライアントのメインネットローンチにより、その共通依存関係が取り除かれました。

100日間Firedancerを稼働し、50,000ブロックを生成した一部のバリデーターは、このクライアントがコンセンサスに参加し、有効なブロックを生成し、Agaveのコンポーネントに依存せずに状態を維持できることを実証しました。

本番運用の実績は限定的で、数ノードで100日間ですが、より広範な採用への道を開くには十分です。バリデーターは今や本物の選択肢を持ち、ネットワークのレジリエンスは移行を選ぶバリデーターの数に比例して高まります。

なぜ機関投資家はバリデーターソフトウェアを重視するのか

クライアント多様性と機関投資家の採用の関連性は、推測ではありません。

LevexによるFiredancerの解説では、このクライアントが「Solanaの信頼性とスケーラビリティに関して機関投資家が提起してきた主要な懸念に対応しており」、マルチクライアント冗長性が「企業が重要なアプリケーションに求める堅牢性を提供する」と述べられています。

2023年9月のBinance SquareによるSolanaの機関投資家向け準備状況に関するエッセイでは、過去の停止が企業参入の主な障害であり、Firedancerが「潜在的な解決策」と位置付けられています。

この分析では、信頼性こそがSolanaがEthereumや他のレイヤー1ネットワークと競争する上での「主要な差別化要因」であり、単一クライアントリスクの排除が「ネットワークレベルのダウンタイムを許容できない機関への最大の弱点を取り除く」可能性があると主張しています。

この論理は、Ethereumのクライアント多様性キャンペーンで確立された枠組みと一致します。

ブロックチェーンインフラを評価する機関のリスクチームは、何かが壊れたときにどうなるかを知りたがります。

バリデーターの90%が同じクライアントを実行しているネットワークは、トークン分布やバリデーターセットがどれだけ分散しているように見えても、単一障害点を抱えています。

いずれのクライアントも33%を超えていないネットワークであれば、壊滅的なバグでクライアント全体を失っても運用を継続できます。この違いは、規制対象プロダクトを特定チェーン上で構築するかどうかを決めるリスクマネージャーにとっては決定的です。

Solanaの約7億6700万ドル相当のトークン化現実資産は、足掛かりに過ぎず、スケールした採用には至っていません。Ethereumはrwa.xyzのデータによれば、125億ドルのトークン化国債、ステーブルコイン、トークン化ファンドをホストしています。

この差はネットワーク効果や開発者の注目度だけでなく、稼働率への信頼も反映しています。

Firedancerのメインネット登場により、SolanaはEthereumコミュニティが本番インフラの最低条件とみなすクライアント多様性の基準を満たすことで、その差を埋める道が開けました。

今後の採用曲線

Agaveが70%を占める状況からバランスの取れたマルチクライアントネットワークへの移行は、すぐには実現しません。バリデーターは切り替えコストに直面します。FiredancerはAgaveとは異なるハードウェアチューニング、運用手順、パフォーマンス特性を必要とします。

このクライアントの100日間の本番実績は成功していますが、Agaveの数年にわたるメインネット運用と比べれば浅いものです。リスク回避的なオペレーターは、ステークを移行する前にさらなるデータを待つでしょう。

それでも、現在のインセンティブ構造は多様化を後押しします。Solana Foundationのバリデーターヘルスレポートはクライアント分布を公開しており、大規模オペレーターに対して単一実装への集中を避けるよう評判面での圧力をかけています。

ネットワークの停止履歴は、そのリスクを痛感させます。そしてETFの憶測、RWA発行、企業決済パイロットなどの機関投資家向け採用ストーリーは、Solanaが信頼性の問題を克服したことを示すことにかかっています。

アーキテクチャはすでに整いました。Solanaには異なる言語、独立したコードベース、別々の障害モードを持つ2つの本番クライアントがあります。ネットワークのレジリエンスは、最初のモノカルチャーから、どのクライアントもチェーン全体をオフラインにできない分布へと、どれだけ早くステークが移行するかにかかっています。

Solanaが本番インフラとして機能し、次のクライアントバグでも協調的な再起動なしに生き残れる現実的な道筋があるかどうかを評価する機関にとって、今がその分岐点です。

The post Firedancer is live, but Solana is violating the one safety rule Ethereum treats as non-negotiable appeared first on CryptoSlate.